依頼者保護給付金制度の議論の現状


 反対している弁護士も多いと言われている、依頼者保護給付金制度であるが、日弁連は微修正を加えて批判をかわしつつ導入に向けて邁進している。


 先日の大阪弁護士会常議員会で明らかにされた、依頼者保護給付金制度の修正点は以下のとおり。


1.依頼者保護給付金→依頼者見舞金に変更。
2.依頼者または依頼者に準ずる者を自然人に限定。
3.対象行為を横領行為に限定。
4.除斥期間に、一定の場合に支給出来るとする例外を設けた。
5.加害弁護士1人につき2000万円上限、被害者1人につき500万円が上限。その範囲内で会長が裁量的に給付額を決定できることを明確化。
6.給付総額は予算で決定するとしていたが、キャップを規定内に明記した。
 ・毎年理事者会で決定する。
 ・附則として1億件を上限とした。
7.附則に5年で見直し条項を明記。
8.見舞金対象行為を平成29年4月1日以降の行為とした。
9.施行を平成29年10月1日とした。


 ここで問題なのは、キャップを設けたという点だ。一見キャップを設けたとなれば、無制限の支出は食い止められるかのように思えるだろう。


 しかし実際には違う。


 キャップの意味についての執行部側の説明は次の通り。

 規程案の条項の中の表現は「一の年度における支給額の合計は、毎年度、理事会で定める金額を上限とすること」となっており、附則の方の表現は「(上記の条項の)理事会で定める額は、1億円を超えない額を目安とする」とのこと。


 この説明からすれば、あくまでも1億円は「目安」にすぎない。

 あくまで1億円は目安に過ぎないから、昨年度の実績などから今年度は2億円限度に設定する、ということも規程上、十分に可能である。

 仮に1億円と定めたとしても、ある年度で既に1億円を支出したあと、さらに見舞金事案が出た場合には、実際には、申請者の不満を招かないように、この年度は1億円を超えてもやむをえないと判断して、予備費からの支出は可能な規程となっているようだ。
 
 ある常議員の先生が「キャップということの意味だが、1億円を超えたら、その年度では絶対にもう払わないのか」という趣旨の質問をしたところ、執行部側の回答は、「そうとは限らない」というものであった。


 これでは、キャップ制を名乗りながら、通常の意味で言われているキャップ制とは到底相容れない制度を用意していると言っても過言ではない。これをキャップ制だと公言して、支出の上限を画したかのように説明するのならば、それは誤導も甚だしいと言わなければならないだろう。行儀悪く言わせてもらえば、各地の反対の声に対して日弁連執行部は、この程度の説明でお茶を濁せば大丈夫だと考えているわけで、逆に言えば、それだけ会員は現執行部になめられているということだ。

 つまり、不祥事が多発すれば、会長の裁量で見舞金を数億円を超えてガンガン支出するって事態もあり得ると見た方がよいだろう。


 しかも、一度導入した場合、不祥事が多発して弁護士会の会計が保たない状況に陥ったとしても、撤退しますとは到底いえまい。世間からその程度のものなのかという痛烈な批判が予測されるからである。

 先日も対案を述べたが(当職の10月6日のブログを参照)、導入すべきという執行部役員で、まずポケットマネーを出して基金として始め、数年経過後に本当に執行部の主張するような効果が出ているかを検証した上で、意味があれば、初めて本格的な制度として導入すべきだ。
 意味があると明確に分かれば、反対する人もそういないだろう。執行部がまず率先して自腹を切って行動すれば、反対意見が多いと言われる若手の納得も得られやすいだろう。

 そんなに意味がある制度なら、反対する人を巻き込もうとしないで、やりたい人で、お金を出し合って、まずやってみればいいじゃない。素晴らしいことなんでしょ?