初めての遠近両用眼鏡~その2

眼鏡の購入といえば、昔は●●時計店という時計や宝石を売っているお店の眼鏡部で、一本3万円以上もする眼鏡を買うのが普通だったように記憶している。よくよく考えてみると、時計店で宝石や眼鏡を扱うという形態が世界的には珍しいようにも思うが、昔はそれが当たり前だった。そこでは、フレームを選んだ後、視力を計り、レンズを選択して作成してもらうものだった。注文してから数時間かかることもあったように記憶している。

そもそも、S弁護士の眼鏡歴は長い。小学1年生当時の視力は2.0だったのに、何故か急に悪くなって小学5年生頃にはもう近視用の眼鏡をかけていた。

父親にも、母親にも近視の傾向はなく、遺伝ではないと信じ切っていた両親からは、テレビの見過ぎではないかとあらぬ疑いをかけられたりもしたものだ。

確かにテレビにリモコンがない時代に、親がやってくるとすぐにスイッチを切って勉強しているふりをする必要があったため、かなり画面の近くでテレビを見ざるを得なかったという、今どきの子供には理解しがたい理由もあるにはあった。

しかしその後、弟や妹も近視傾向があることが分かり、S弁護士だけがテレビを見過ぎているという疑いはそのうち薄れていった。

それはさておき、眼鏡や自動車のタイヤのように滅多に買い換えないものは、えてして価格が高くなるものだ。買い換え需要がそんなにない以上、限られた需要で経営を賄わざるを得ないから、必然的に1個あたりの利益を上げざるを得ない。

S弁護士が弁護士に成り立ての際に、ボスの受任した大きな眼鏡屋問屋さんの破産管財業務を手伝わされたが、眼鏡小売店の店長達はこぞって、アフターサービスや問屋さんの問題を非難して、なかなか売掛金を支払ってくれなかった。また、時間のある(悪い言い方をすれば暇な)店主が多いらしく、担当者のS弁護士に電話をかけてきて散々問屋さんの問題に関する非難と、売掛金を請求される理不尽さを訴える人もかなり多くいたものである。そんなことに時間を割いていても眼鏡店の経営が成り立っていたのだから、牧歌的な時代だったのかもしれない。

最終的には、合計120件以上の売掛先に訴訟を提起し、10件以上の売掛先に差押をかけ、かなりの部分を回収したのだが、眼鏡屋さんの店主との攻防は本当に時間を割かれるものだった。

ところが、いまは眼鏡も量販店の時代で、フレームとレンズがセットで幾らという販売形態の方が多いようなのだ。まあ、その方がお値段も明快だし、買いやすい。量販店だから品質が悪いという噂もない。

それなら、量販店でも問題はあるまい。

処方箋を持って、S弁護士は、勤務先近くの眼鏡量販店の一つに向かったのだった。