日中韓FTAシンポジウムの旅日記~その3

 Kさんが連れてきてくれたのは、半地下の喫茶店。

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 そこで、Gさんの通訳で中国には弁護士補のようなものがあり、Kさんは理系の大学を出てすぐに司法試験に合格して弁護士に成ったばかりであることを知る。弁護士補の身分証明書は青で、1年経てば赤の身分証明書になるそうだ。S弁護士が日弁連の、Y弁護士が大阪弁護士会の身分証明書を出し、身分証明書の話で少し盛り上がる。

 最初にレモンを浮かべた水が出てくるが、中国の水道水は飲めないと聞いている。Gさんに確認すると、水道水を蒸留した水を使うので大丈夫とのこと。メニューは写真入りで手作り感満載。出されたぬるい水を飲みながら考える。

 注文は、暑かったのでアイスコーヒー。X教授も同じ。GさんとKさんはホットコーヒー。

 しばらくたってやってきたアイスコーヒーは、日本のアイスコーヒーとは違っている。まず氷が見えない。飲んでみても冷たい!という感じはない。小さく溶けかけた氷を一つ見つけたが、ここでのアイスコーヒーとは、「熱くはないコーヒー」という意味のようだった。

 スイーツ好きのY弁護士はスイーツ1択。感想は、「意外にいけます」というものだった。しばらく時間をつぶして、お手洗いを完了し、青島駅に向かうことになる。

 喫茶店のカウンターの後ろには、チェ・ゲバラのポスターが貼ってあった。ゲバラはカストロと共に、革命によりキューバに社会主義国家を建設した英雄の一人とされている。中国なら毛沢東でもおかしくないところだが、なぜか、ゲバラだ。ちなみに、「キューバは格差社会ではない」との旅行記を読んだことがあるから、現代中国の格差社会へのささやかな反抗なのかもしれない。

 店を出る際に指さして、チェ・ゲバラ、というと入れ墨をした店員の兄ちゃんが頷いて笑っていた。


 駅まで送ってもらってKさんといったんお別れ。

 Gさんが、チケットを受け取ってきますと言ってパスポートを持って駅の切符売り場の方に行く。その間しばらく、時間がかかるとのこと。

 駅前の広場を見ると、遠くにケンタッキー、マクドナルドが見える。それに「李先生」という店は、中国のファストフードであることを教わる。さっきまで暑かったが、日陰に入って風が吹くと意外にひんやりする。湿度が低いのかもしれない。

 物乞いが2度もやってきて小額紙幣を握りしめた拳を突き出して何か言っていたが、生憎小額紙幣の持ち合わせはない。かといって、六枚しかない100元札を大盤振る舞いするほど豪気でもない。またX教授が、「一度お金を渡すとすぐに情報がまわって10人ぐらいが、あっという間にたかってきますよ。」と注意してくれる。

心は決まった。

スミマセンが、もっとお金持ちの方にお願いするか、頑張って働いて下さいね、だ。

 駅の真ん前に「青鉄特警」と大書した、でかい警察官詰め所がある。拳銃ではなく、自動小銃を肩から下げた警官らしき人が、そのバルコニーのようなところを巡回して睨みをきかせている。

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(向こう側に巡回したときに急いで撮影)


 ちょっと怖いですね~と話すと、「中国ですからね。いろいろ弾圧してるんでしょう。外に出てないだけで。」と、怖~いことをX教授がさらっと仰る。

 そういえばハリウッド映画「2012」で、地球滅亡が予測された後、一部の富裕層・政治家などが庶民を見捨てて自分達だけ脱出しようと、一般に知られないように情報統制しつつ人類の箱船を造船していたが、その造船場所が中国だったという話があった。大量に人員動員が可能でかつ情報統制もできる可能性がある国が存在するとしたら、その国は中国である、という設定が全世界的にも最も説得力があったということなんだろうが、そんな感じなのだろうか。

 ここで、X教授から、一番大事な言葉を覚えておくようにと指示が出た。ツァーサ・サイナーリという言葉だ。??と思っていると、「トイレはどこですか」という意味だそうだ。確かに大事だ。特に水が悪いとお腹を壊しやすいし、中国でトイレットと英語で言っても、ほぼ誰も分かってくれないらしい。何度か声に出して、覚えようとするが、なかなか覚えられないのは年のせいか。

 Gさんがチケットを手にして戻ってくる。チケットにはパスポートナンバーと氏名が印刷されている。確か当初は青島から済南まで高速道路で移動する予定だったそうだが、当局から、安全面から高速道路はまかり成らんとのお達しがあったそうで、結局鉄道になったとのことだった。そんなところまで当局が関与してくるところは、やはり社会主義国家の片鱗が見え隠れする。

 当局がどうして高速道路を走らせてくれないのかはよく分からんが、鉄道好きのS弁護士としては有難い。

 青島駅に入場するにも厳重なチェックが必要。

 パスポートとチケットの確認をしてようやく駅構内に入れる。→空港のような荷物検査→チケット確認して改札を通してもらいやっとホームに入れる。

 しかも、乗車が遅れると、まだ乗客が並んでいても、おいて行かれるのだそうだ。

 さすがにおいて行かれたらお手上げだ。本当は整列乗車が好きなんだが、そんな贅沢言っていられない。郷にいれば郷に従う、これが旅行の鉄則だ。荷物を引き吊り、足を踏まれたりしながら、列も何もない感じで改札口突破を目指す。

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(我先に改札を突破しようとする人々)

 ホームに出ると一安心だと思ったが、発車時間までに乗らないと置いていかれるそうなので、指定車両に急ぐ。

 指定車両に乗り込むと、既に荷物棚は荷物で一杯。X教授やY弁護士のでかいスーツケースを乗せるため、スペースを空けてなんとか積み込む。

 車内では再度パスポートとチケットの確認、ふん!という感じで愛想はない。車内販売も黙って通り過ぎるときもあり、やる気のない感じ。

 X教授が水を一本、Gさんに買ってもらった。

 車両間のドアは常に開いている。どういう理由があるのか知らないが、日本では閉じているので違和感がある。速度表示があるが、200キロをどうしても超えない。Gさんからは、300キロくらい出る性能があると聞いていたが、何度見ても200キロまで届かない。197キロが最高だったように思う。おそらく線路の性能の問題なのだろう。

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(何故か車両間のドアを開けっ放しで走行する列車)

 車内はほぼ満席。電話でしゃべる奴、端末からイヤホンをはずして周りに聞こえる音を止めない奴などいるが、だーれも注意しない。
マナーが悪いのか、人の自由を尊重しているのか。よく分からない。

 ふと横を見ると、X教授とY弁護士が爆眠していた。

(続く)