日中韓FTAシンポジウムの旅日記~その6

  開会式の挨拶のあと、まずは記念撮影ということで外にでる。ハンドメガホンを持った写真屋さんがいて、あれこれ指示を出している。カメラ自体が回転しながらシャッターが下りるという特殊カメラを使ったものだった。多分横に広い、パノラマのような写真ができるのだろう。

 しかし、日差しがまぶしくて目をきちんと開けていられない。

 確かこの間、新調した眼鏡はUVカットのはずだが、、、、と一瞬思ったが、良く考えるとUVは目に見えないのであって、いくらUVをカットしてもまぶしい可視光線を防ぐ効果は全くなかったのだ。つまりは、当たり前のことなのだと妙に納得する。

 おかげで目が痛くなってしまった。

 それにしても、背の低い人のために踏み台にする箱を、写真屋さんが用意していて、身長差による凸凹を調整するのが、昔っぽくておもしろい。

 無事記念撮影は終了したが、このあと、すぐに発表なので気が気ではない。

 会場に戻ると机が並び変えられていた。

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(S弁護士の席。微妙に坂の字が中華っぽい?)

 会場では、通訳ですという北京大学の女子大生の挨拶を受ける。京大に留学していたそうで、流ちょうな日本語を話す。

「へー、Gさんと二人でダブル通訳なんだ」と独り言をいうと、

「いえ、私は、ディスカッションの通訳なんです。」とのお答え。

 ディスカッション?!

 質問はあるかもしれないと聞いてはいたが、ディスカッションなんて聞いてなかったぞ。

 質問以上のディスカッションまで想定され、しかもディスカッション用の通訳まで準備されているとは、こっちにとっては、さらに想定外。


 もうどうにでもしてくれという気になってきた。ここは中国。ラーメンのCMだと4000年の歴史の国だ。細かいことは気にした方がダメなんだろう。

 席は左からGさん、X教授、S弁護士、Y弁護士、女子大生通訳のムンちゃん。

 いよいよシンポジウム開始。昨日の夕食時となりにいた姜先生が、司会。何か注意をしているが、もちろん中国語なので、分からない。
 Gさんによると、どうやら発表時間を20分に制限することになったとのこと。

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(シンポジウム開始の図。~左端が司会の姜教授)

 早速、山東政法学院の李先生(女性)が発表を開始した。発表順は中国の李先生、X教授、S弁護士、Y弁護士、韓国の張教授、中国の芳先生となっている。

 もちろん、李先生が何をいっているのか分からない。

 しかし、今は自分の発表が優先だ。だがここまでどうやって発表するのかも聞かされていない。同時通訳なのか、普通にしゃべって通訳してまたしゃべる方式なのかも分からない。

 質問に加えてディスカッションも予定されているなどと、最初の話と相当違ってきている気もするが、乗りかかった船どころか既に出航している船だ。今更、おうちに帰るとも言い出せない。

 とにかく発表時間が制限されたことから、蛍光ペンで発表原稿から、割愛する部分をチェックし始める。
 他人の発表なぞ聞いている暇はない。

 X教授が発表開始。

 どうやら、同時通訳ではないようだ。発表者が日本語で発表し、区切りの良いところでGさんが中国語に通訳する。しかしこれなら、20分の発表でも通訳に半分時間がかかるから、実質10分の発表時間しかないことになる。

 原稿自体の中国語訳は配布されていると聞いているので、要点だけ発表するしかないと腹をくくって、バッサリと割愛する部分に×印をつけて切り捨てる作業をする。

 そして、ついに、S弁護士の発表となった。

 発表自体は、堂々としていろというX教授の指示と、できるだけゆっくり話したこと、緊張していたこともあって、あっという間だった。

 かなり割愛したが、何とかまとめきる。

 続いてY弁護士の発表だ。

 Y弁護士の紹介がなされるとなぜか、まばらな拍手が。おお、これまでの発表者は紹介されても誰も拍手なんてなかったが、どうしてY弁護士だけ拍手があるんだろう。

 発表を終えて安心したせいか、どうでもいいことが気になるな。
 理由は分からない。
 
 X教授がY弁護士の横について、割愛する部分などを指示する。Y弁護士も無事にまとめきったようだ。

 Y弁護士は発表後、他の先生の発表原稿を女子大生通訳ムンちゃんに翻訳してもらっている様子。どんどん席が接近している。ほとんど肩を寄せ合った状態になっている。どうでもいいけど、ちょっと羨ましいぞ。

 Y弁護士は聞き上手でもあって、女子大生の通訳にうんうんと頷いて聞いている。しかし、Y弁護士が頷くと、頷きアクションに合わせて、Y弁護士の椅子がギシギシいう。少し椅子の立て付けが悪いようだ。

 「こらこら、Y弁護士、女子大生と一緒になって椅子をギシギシ言わせたらあかんやろ。」とちょっと誤解を招きかねない、不埒かつ不適切な表現が頭に浮かぶS弁護士であった(失礼!)。

 他の先生方の発表中は、X教授は教え子のGさんとなにやら話しているし、Y弁護士はムンちゃんと接近遭遇しているし、両者の真ん中でぽつんと、意味もなく、100年の孤独を感じるS弁護士であった。

 
 S弁護士が、「ガルシア・マルケスの100年の孤独っていったって、中国は4000年の歴史なんだよな~」と、ぼーっと考えていたところ、突然停電が起きた。

 どうやら建物全体が停電しているようだ。「最近はこんなこと無かったんですがね~」とGさん。誰も騒がない。どうせそのうち復旧するさ。騒いだって意味ないよ、という感じがいかにも大陸風に感じられる。

 エアコンも止まり次第に暑くなる。

 しかし発表中である韓国の張教授は、原稿も見ずに、暗闇の中、淡々と発表を続ける。ある意味凄い。10分ほどで停電は回復。空調も効き始めた。

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(突然の停電)

 会場のトイレは和式。廊下に飲み物・果物などがおかれているテーブルがあったが、食欲がないことと、食べていいのかわからなかったことで今回はパスした。
最後の山東学院の方のご挨拶がかなり長かった。結局時間が押したせいか、質問もディスカッションもなかった。

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(無事発表を終えて)

 X教授のご命令でY弁護士とムンちゃんのツーショット写真を撮る。Y弁護士へのX教授の命令は、連絡先を聞きだしてS弁護士が撮影した写真をムンちゃんに送ること。

 なるほど、若者達への配慮ですな~。X教授の心遣い、ニクイじゃないですか。

 その後、前の日に夕食を食べた1号館に移動してバイキング方式の昼食。ここで食券が使えた。入る際にも並んでいる学生よりも先に通してもらう。

 発表が終わって気が緩んだのか、箸を落としてしまい、換えをもらおうとするが、食器置き場の箸がもうなくなっていて、困る。料理を追加する前に食器をまず補充せんかいな。結局、格好は悪いが長さと色の違うハシを組み合わせてしのぐ。

 観光について、Gさんが、軽い登山になるが、仏像がたくさんあるという山寺への参拝を提案するが、X教授が「暑いでしょ、行きたければどうぞ。私、下で待ってますから」と即時に却下。このまま観光しなくてもいいという話まであったが、Gさんも残念そうだったので、協議の結果、済南市民の憩いの場、大明湖に行くことになる。

 3時集合。それまでは部屋に戻って準備とのこと。シャワーを浴びて少しさっぱりするが、寝てしまうと起きられない可能性がある。危険と思って我慢する。

 集合場所に来てみると、どこかの法律事務所から是非会ってお話ししたいとの申し入れが来ているそうで、あまり時間がないらしい。急いで大明湖に向けてでかけようとするが、呼んでいるはずのタクシーがこない。Gさんいろいろ連絡するも、どうもうまくいかないようす。

 通訳女子大生ムンちゃんも一緒に行くことになった様子で、彼氏と一緒にきていた。

 中国当局からハニートラップを仕掛けられたのではないかという噂もある、と噂で聞いたX教授が、独身のY弁護士に「いやいや、彼氏がいても、日本の弁護士はもてますから・・・」などと、いつもの笑顔を浮かべながら、その笑顔にそぐわない不穏な発言をしている。

 そういえば、X教授も弁護士登録をしている。X教授は中国渡航歴も多いし、中国人女性が日本の弁護士を見る目について詳しいのかもしれない。しかし、今日は、中国のバレンタインデーだ。恋人達を祝福すべき日のはずだ。

 「X先生、今日は中国のバレンタインデーでっせ!そんな恋人達の聖日に、それは、ないんとちがいますか!」、と心の中で義憤に駆られたS弁護士は、Y弁護士に小声でこう告げるのであった。

 

「Y君、、、、、X先生の言うとおりやで・・・。日本の弁護士の魅力、見せつけてやらなあかんで・・・。」

ナイスガイのY弁護士は、S弁護士の心からの忠告を、笑顔で右から左へと受け流したようだった。

 待ち合わせの6号館前あたりまで歩くが流しのタクシーもない。ホテルの参道みたいな道だから、しかたがないのか。

 Gさんが、どういう関係かわからないが、なんとか車を2台捕まえ、湖まででかけることになる。Gさん、X教授、S弁護士が白い車。日本の弁護士の魅力を発揮せよと、X教授の勅命を受けたY弁護士と、ムンちゃん達カップルが青い車に分乗。


市内は結構込んでいる。 

 もうすぐ着きますという、Gさんの言葉とは裏腹に、渋滞する市内をかなり走るがまだ大明湖にはつかない。

 その間に、車内でX教授と、格差について議論。

 いつも思うのだが、頭のいい人と議論すると、こちらの考えも上手く整理できる気がする。

(続く)