日中韓FTAシンポジウムの旅日記~その10

(続き)

 立派なホテル?のような宴会場につれて行かれる。駐車場の両脇も外車だ。

 格差社会だな~中国も。あとで聞くと、国賓等が来た際にも使われる場所だそうだ。そんなところに、着替えもせず汗くさい格好で乗り込むのは、かなり気まずいが、ここまで来たら仕方がない。そもそもこちらから宴会をして欲しいって頼んだ訳じゃないし。

 ところがホスト弁護士がおおトラ!だった。

 青島ビールの出来立てを、製造工場から直接持ってこさせるなど、実力者らしいが、飲めば飲むほど虎度がます。大学の理事でもあるそうだ。

 青島市は海沿いなので、海鮮の中華が勢揃い。それと共にチンタオビールも林立している。ああ、お酒がなくてゆっくり食べられるのなら良いのになあ~。と子供のようなことを考えつつ席に着く。

 有名な青島ビールはキンキンに冷えているわけじゃない。確かに冷たいがぬるい感じの冷たさだ。結局勧められて断れず、ビールを呑まされて、速攻頭痛に悩まされながらもこっちも、もうやけくそだ。

 盛り上がりたいんならやってやろうじゃないの。原潜見学でもらった帽子をかぶって敬礼したり、肩組んで写真撮ったり、やるだけやってやった。

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(チンタオの有力弁護士さんと~1)

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(チンタオの有力弁護士さんと~2)

 さらに大トラは乾杯を繰り返すことにより、トラ度がパワーアップして、結構絡んできた。中国語はよく分からんが、充血しかかった眼でこちらを見つめながら何かを言っている。もちろん意味など分からない。

 「わかった、わかった、○○先生最高!」といって、肩をバンバン叩くと相手も、にやっと笑って、グラスを差し出す。

 相手はお酒、こっちは強炭酸のミネラルウォーターで乾杯する。アルコールの影響による頭痛に悩まされながら、もうどうだって良いんだ。仲良くできたらきっとそれで良いんだ。世界は一つ、人類はみな兄弟なんだ。一日一善だ。もうどうにでもしてやってくれ~。

 しかし、そのうち大トラが近寄ってきて、太ももをスリスリと撫でられたときには、さすがに身の危険を感じた。やばい、目が座ってる。ほんまもんのトラになっとる。通訳してくれるGさんも他の弁護士と乾杯してるし、X教授も何かを食べていて、こっちに気付かない。舌なめずりするトラの前に放置されたヒヨコ状態だ。

 なんとかしてこのピンチを抜け出すには・・・。どうすればいい?

 ここは、あれだ、X教授から教わった最終手段を使うしかない。
 「ツ、ツァーサ、サイナア~リ」

 そういって、そそくさと席を立とうとすると、袖を引っ張られ、椅子にどんと座らされた。

 ??

 何が起こったのか分からないS弁護士に対して、身振りで、ここでやればいいと、大トラ。

 トイレという生理現象を尊重するのは万国共通。厳粛な裁判の尋問中だって、お腹が痛いからトイレに行きたい言えば、休憩を入れてくれたりするなど尊重してくれるもんだ。つまり最強の必殺技のはずだった。

 その最強の必殺技のはずが、それが通じない・・・。マジか!

 スペシウム光線をゼットンに跳ね返されたウルトラマンのように、倒れるしかないのか・・・。ゼットンを倒してくれる科特隊もここにはいない。孤立無援状態なのだ。

 もちろん国賓が来るところでそんなコトしちゃったら、国際問題だ。「やらかしました」では、たぶん済まない。運良く拘束されなくても、パスポートの表紙から裏表紙まで全頁にわたって「恥」というスタンプを押されるかもしれん。「日本の弁護士、中国で大失態!」などとワイドショーや週刊誌で報道されたら、懲戒されるかもしれん。

 やはり、ここは譲れない。

 勇気をふるって今度は毅然と「ツァーサ・サイナーリ!」といったら、聞きつけた隣の若い弁護士さんが連れ出してくれ、なんとかピンチは脱した。多分ゆっくりトイレを済まして戻れば、もう忘れているはずだ。

 しばらくして落ち着いたので戻ったら、大トラは、こっちのことは忘れていてくれたようだが、さらにパワーアップして絶好調。X教授にあなたを兄貴と呼ぶとかなんとか言ってからんでいる。しまいにはX教授の手をとって接吻をしたりしはじめた。

 しかしX教授の肝臓は凄い。あまた襲いかかる乾杯の嵐を平然と受け止め、底なしに飲んでいく。X教授がいてくれて宴会の場は本当に助かった。

 ようやく締めの時間になったようで、大トラとX教授が挨拶をする。しかし、それが終わると、大トラさんの記憶が瞬時に消去されるのか、再度また乾杯やらなんやら言い出して飲み始めて振り出しに戻る。リピート再生のように宴会が終わらない。

 何度目かの挨拶のあと、やっとこさ、宴会の終了となった。

 ホテルに帰ろうとしても,駐車場で大トラは、こっちの車に乗るんだと言って聞かず、かなり苦労した。

 開いている車の窓に取りすがって、X教授に向かって「あなたを兄貴と呼ぶ。兄貴ったら兄貴なんだよう!(S弁護士の推測による意訳)」と叫び続ける大トラさん。一瞬の隙をついてパワーウインドウでシャットアウトし、ようやく大トラを引きはがし、ホテルに向かって車が出発できたときには、かなり安堵の気持ちで一杯だった。

 帰りの車で、Y弁護士と凄いトラがいたもんだと話していたら、隣からX教授が「あいつは大したことがない。ただの酒が弱いだけの奴ですよ~」、と仰る。「そうですね~」、と答えると、「いやいや、本当にあいつは大したことがない。ただの酒が弱いだけです・・・」と、今度はX教授がリピート再生。

アイアンレバーを有するX教授も、酒精の影響は避けられないご様子だった。

 さらに、X教授はホテルの直前でGさんに「カラオケにいきましょう。おねーちゃんのいるカラオケがいい」、と言いだした。Y弁護士もカラオケならいいですと言っていたがおねーちゃんが来ると聞いて断固拒否。

 それでも、「いやいや中国のカラオケにはおねーちゃんはつきものなんです。だからそれが普通なんです。だから普通のカラオケなんです。普通のカラオケに行こうといっているだけなんです・・・」等とX教授。一見、見事な三段論法?で説得的だが、スタート時点でオネーチャンのいるカラオケの方が良いと言ってしまったことで、「普通のカラオケ=オネーチャンのいるカラオケ」という前提が成り立ちにくい。やはり酒精の影響か前提からして微妙に違っているような気がしないでもない。

 本当に中国のカラオケはおねーちゃんとセットなのが普通かどうかはよく知らないが、アルコールが体内でエネルギーに変換されるX教授と違って、飲めないお酒を飲んだせいで頭痛がしているS弁護士では、残念ながら中国カラオケの真髄を確かめに行くには、X教授のような体力が既に残っていない。

 さすがにX教授も大人なので、最後は折れてくれ、ホテルの部屋に戻れましたが、X教授のパワーには脱帽です。

 子虎がここにおりましたか・・・。(スミマセン!)

(続く)