日弁連副会長の女性枠について


 日弁連副会長は現在13名だったと思うが、2名増員して、その2名の枠は必ず女性が就任するようにしようという案が持ち上がっている。現在、各単位会に意見照会がなされている段階だ。

 日弁連執行部の説明だと、これは男女共同参画の一環で、ポジティブアクションとして相当だ、ということのようである。


 大阪弁護士会の常議員会で、以前もこの議論が持ち上がったときに、男女共同参画委員会の方が説明に来られていた。

 私は、説明委員の方に、これまで日弁連は男女共同参画について積極的に推進してきたはずであり、特に女性の会員が副会長になれないような不都合な状況が存在するのか、女性で日弁連副会長になりたいのに日弁連の制度等の問題でなれないという人が現実に何人も存在しているのか、と聞いてみた。


 説明委員によれば、そのいずれもない(少なくとも説明員は聞いたことはない)とのお答えだった。


 だとすれば、ポジティブアクションとしての副会長女性枠というのはおかしいのではないだろうか。


 そもそもポジティブアクションとは、「一般的には、社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することなどにより、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置のことをいいます。」(内閣府男女共同参画局のホームページより)というのが一般的な定義だろう。


 そうだとすると、大阪弁護士会の男女共同参画委員会の委員の方ですら、制度面で女性が副会長になりにくいという問題は無いと認めているし(つまり社会的・構造的差別は存在しないし、機会不均等という問題もない。)、現実に日弁連副会長になりたいがなれないという方も存在しない(つまり不利益を被っている人もいない)と認めていることになる。

 したがって、ポジティブアクションの前提たる、社会的構造的差別によって不利益を被っているという状況が存在しないのだから、一定の特別の機会を提供する必要はないはずだ。

 ということであれば、日弁連副会長に助成枠を設けるというポジティブアクションを導入することは、その前提を欠き、その特別な暫定的措置は、他のものに対する逆差別になってしまうだろう。

 また女性の参画にきちんと制度を設けて機会を保証しているにもかかわらず、立候補者が少ない(ほぼいない)ということは、日弁連副会長にならなくてもいいというのが立候補しない女性の意向であって、その意向についてはきちんと尊重できているということになるのではないのだろうか。


 そればかりか、仮に女性枠を設定してしまえば、その枠を女性で埋めなくてはならないから、日弁連副会長に相応しい人格・識見を有しながらも、副会長になるつもりがない女性に、他に候補者がいないから、という理由で周囲が副会長職を押しつけることにもなりかねないだろう。


 さらに女性副会長枠について、経済的理由もあるだろうからということで、月額数十万円の支援をするという案もあるようだが、経済的理由で日弁連副会長になれないという事情をもつ弁護士がいるとしても、それは男女を問わない。経済的理由で立候補しにくい男性にだって支援はすべきだ。女性だけが経済的に困っている(傾向にある)という発想こそが、男女共同参画の理念に反しているのではないだろうか。

 また、真に日弁連に女性の意見・視点が必要なのであれば、日弁連会長だってポジティブアクションを導入するという意見があってもおかしくはないが、そのような意見・提案は聞いたことがない。
 副会長だけポジティブアクションが必要で、会長にはポジティブアクションが不要だとする合理的根拠もないだろう。
 私の穿った見方からすれば、会長職を除いていることは、日弁連会長の座を狙っている男性の重鎮がたくさんおられることもあって、その方々への配慮であってもおかしくない。仮に私のこの邪推が正しいとすれば、会長職は男性重鎮達の争いに任せて男性に独占させ、副会長職で男女共同参画を実現したかのように見せかけてお茶を濁すものであり、それこそ男女共同参画の理念に反しているように思うのだが。


 男女共同参画と言われれば、弁護士はあっさり賛同する傾向にある。男女共同参画という言葉に弁護士はとても弱いが、この問題はよくよく考えてみる必要があるように私は思っている。