司法試験の選別機能は健全か?


 平成29年の司法試験は1543名が合格した。
 途中棄権者を除く採点対象者数は5929名
 短答式試験の合格者は3937名
 論文式試験の合格者は1543名だ。


 短答式試験は、1科目でも40%未満の得点があると不合格だが、総合での合格点は、175点満点の108点だ。合格率は72.65%。平均点が125.4点だから、平均点から20点近く低い得点でも合格だ。

 平たく言えば、下位1/4に入らなければ合格なのだ。

 ちなみに予備試験合格者は400人受験して393人合格。合格率は98.25%。
 法科大学院卒業者は5529人受験して3544人合格。合格率は64.09%。

 司法試験法が定める予備試験合格者の水準は法科大学院卒業者と同じレベルのはずだから(同法5条1項)、仮に予備試験考査委員が法科大学院卒業者レベルと考える受験者層が受験した場合は、短答式試験の合格率は98.25%であってもおかしくないということになるはずだ。逆に言えば、現在の短答式試験の合格はそれだけ簡単なはずなのだと、いえなくもないのだ。

 確かに、現行司法試験の短答式試験は論文式試験と連続して実施されるため、一概に比較はできないが、私がざっと問題を見た限り、判例の趣旨からみて正しいか否かを判断させるだけの単純な正誤問題が多い。これはつまり、基礎知識があれば一瞬で回答できる問題が多いということで、かなり簡単になっているように見える。
 特に憲法などは、正しければ1、誤っていれば2をマークせよなどと実質2択の問題も多い。勘で選んでも50%あたるわけだし、しかも部分点もある。


 連続受験の疲労を差し引いたとしても、この問題で8割前後得点できないとすれば、かなり実体法の知識・判例の知識が不足している可能性が高いのではなかろうか。
 そうでないと仰る方がおられるなら、試しに旧司法試験の短答式問題を解いてもらいたい。旧司法試験の短答式問題の複雑さ、問題文の量・作業量の多さに驚かれる方が多いのではないだろうか。

 そしてこのように極めて合格判定が甘いと思われる短答式試験に合格した(落とされなかった)受験者が論文式試験の採点対象者になり、そのうち約40%が論文式試験に合格することになる。


 おそらく司法試験合格者1500人程度とされた政府方針にしたがった合格者数の決定だろうが、採点者の採点実感に関する意見は毎年、出来の悪い答案に対する声を上げ続けている


 何年か前の採点実感に関する意見では、司法試験に合格したから優秀だと思うな、しっかり実体法を勉強するようにとの指摘もあった。これは、本来合格させてはならない受験生まで合格させなくてはならない委員が、せめて合格後は一生懸命勉強して欲しいとの悲痛な叫び声であったように、私には聞こえる。


 いまでは、日本語での文章表現能力にすら問題を抱えた答案が続出しているようだ

 その頃からも、さらに、採点実感に関する意見は、法的な解決能力というより、日本語の文章表現能力に疑問を感じているなど、指摘される点のレベルが下がってきているようにも読める。


 一度、司法試験委員会には、下位合格者の答案をいくつか公表してもらいたい。別に答案用紙そのものではなく、答案を活字化したもので構わない。司法試験合格者のレベルが、どの程度のことになっているのか、明確にしないと問題の本質が明らかにならないからだ。


 予備試験組に惨敗しつつも、きちんと教育できている、きちんと修了認定していると言い続ける法科大学院側の主張がどれほど正しいのかはっきりするはずだ。

 問題の本質を明らかにしなければ対策も取れないではないか。


 どうしてそんな簡単なことができないのだろう。