法曹養成フォーラム第3回議事録から~その2 2011.08.03掲載

(前回の続きです)

 

 今回は、ロースクール擁護派の伊藤委員(山梨学院大学法科大学院客員教授)の発言を見てみます。

 

「(自分は検事を辞め、弁護士登録し、法科大学院客員教授になっていることを述べたあと)私はずっと前からこの問題を考えるときに,所詮この給費制・貸与制というのは司法試験に合格した人の話ではないかと。だから,余り感動を覚えないんです。特に地方の法科大学院などへ行っていますと,受かるか受からないか分からない。当初の合格者の数も当てにならない。しかも合格率も予想していた数字とは全然違うということで,とにかく受かりたいから来たと。だから,受かった先にお金をもらえるか,もらえないかということについては,学生はほとんど関心がない。それよりは,とにかく約束どおり数字をきちんと保障してくれて受かるような体制をつくってくれというのが彼らの一番の声ではないかと私の周りの人たちは言っております。つまり,受かって給費してもらえるか貸与してもらえるかという人よりはるかに多くの人たちが法科大学院に入りながら,恐らく三振でアウトになって外れていってしまう。その人たちのかかったものをどうやって補償してやるのかということのほうが私にとっては心配だなと。ですから,言いかえれば,言葉は悪いですが,もしそういう受かった人にくれてやるようなお金があるのなら,法科大学院で勉強し,司法試験に合格し,かつ就職する,そういう法曹養成教育全体に対して何らかの支援を考えるべきではないかと考えます。」(下線は坂野が注記)

 

 あ~あ、またもや、法科大学院にとりすがった方の、利権擁護発言としか思えないなあ。

 

 どうして合格率が当初の目標まで届かないかというと、あっちこっちの大学がバスに乗り遅れるなとばかりに教育体制も整っていない状況であっても法科大学院を乱立させ、それを維持しようと意地を張っていることと、厳格な卒業認定が出来ていないからです。

 

 バカみたいに法科大学院の乱立を認可した文科省などは、確か、競争させて法科大学院を淘汰すればいいと言っていたように記憶していますが(法科大学院協会だったかな)、私の記憶が確かだとして、どれだけ淘汰されてますかね。募集停止はまだまだ、姫路獨協くらいじゃないですか。

 

 乱立させておきながら、約束した淘汰をしないから、ロースクール生が溢れ、合格率が下がるんです。小学生でも分かる理屈でしょ。

 

 そればかりではありませんよ。先日、大阪弁護士会法曹人口・養成検討部会では、山梨学院大学より遥かに偏差値の高い関西有力大学ロースクール2校の実務家講師においで頂いて、 実情をお聞きしました。その先生方に、本音のところ、卒業させて実務家にしても良いとお考えのロースクール生はどれくらいいるのかお聞きしました。

 

 詳しくは言えませんが、お二人平均で、上位4分の1くらいなら、とのお話でした。

 

 ただし、お金を頂いて教育しているのだから諸般の事情から、厳格に卒業認定してダメな人を落とすことは出来ないのが現状だとのことです。実務家教員は学者教員と違って、実際に司法試験に合格して合格者のレベルを知っているから分かるんです。司法試験に合格していない学者教員は合格レベルなんてさっぱり分かっていないはずですよ。

 

 仮にお二人の平均をとっても、上位4分の1ですから、少なくとも関西有力法科大学院と同じレベルのロースクールは、厳格な卒業認定をするなら、本来成績上位4分の1以下の方を卒業させてはならんというのがスジです。

 

 おそらく伊藤委員の法科大学院なら、卒業認定できるのは、それ以下の数になるはずです。

 

 これが国民に約束したロースクールの厳格な卒業認定ではないのでしょうか。そしてこの厳格な卒業認定をやれば、合格率は相当上がりますよ。だって受験者が4分の1になるんだから。

 

 ロースクールの淘汰や、厳格な卒業認定という国民への約束も守らずに、ロースクール卒業生の当初予測された合格率だけ守ってくれって、なにわがまま言ってるんですか。子供じゃないでしょ。有識者でしょ。

 

 さらに言えば、ロースクール乱立状態になった時点で、当初の予測された合格率が実現不可能であることくらい、高校生でも分かります。自分の一生をかけた法科大学院進学時に、それが分からなかったと仰るのであれば、法曹になる以前に、状況把握する一般的な能力が欠けてしまっているといわれてもしょうがありません。

 

 三振アウトの人が多く生じてその方々を救済する必要があるというのであれば、法科大学院が責任を持って売り込めばいいじゃないですか。法科大学院関係者や法的ニーズを研究する社会学者の中には、まだまだ法的ニーズはあると仰ってる方がたくさんいらっしゃいますよ。少なくとも厳格な卒業認定(すなわち学生の品質保証)をして、卒業させているのだろうし、法科大学院の目標でもある幅広い教養や豊かな人間性も身についているのだろうから、本来社会では、ニーズもあって品質保証された人材がいれば、当然引っ張りだこの状況にあるはずではありませんか。もし売り込めないなら、ニーズがあるという主張が嘘であるか、法科大学院の厳格な卒業認定が嘘であるか、いずれかでしょう。

 

 どうしても、就職できないなら、ご自分の大学でお雇いになったらいかがですか。法的素養も自分の大学が保証しているわけだし、まさか厳格な卒業認定していながら能力不足とは言わんでしょう。

 

 残念ながら、伊藤委員のこの発言部分は、私には、法曹養成がどうなろうと構わんので、ロースクールの尻ぬぐいを税金でして下さいというお願いにしか読めません。

 

疲れてきましたが、もう少し続けます。

 


「それからもう一つは,先ほどの井上先生のお話にもありましたけれども,この問題は結局同じことを議論しているのです,昔の話と。ですから,国が一回決めたことはきちんとやってみるということが必要だと思うのです。法曹に対する信頼あるいはいろいろなものに対する信頼というのは,約束したことをきちんと守るというところに一番あるのではないかと思うわけです。若い優秀な人たちが法律家の世界へ来なくなっているという話が前回も出ていましたけれども,その大きな理由は,我々があるいは国が約束したことを守っていないからではないか,そういうところに問題があるのではないかと。」

 

 あのね、一度決めても間違っているならやらない方がマシなんです。過ちを改むるに憚ることなかれ。過ちを改めざるこれを過ちという。は古今の名言。まさか知らないとは言わせませんよ。給費制を貸与制に変更するにしても、法科大学院制度を含む法曹養成制度が上手くいっていることが前提だったのではないですか?

 

 それに優秀な人材を集めるためには、約束を守ることではなくって、お金をかけるか、権力を与えるか、名誉を与えるか、くらいしかないと思いますよ。それ以外にあるなら是非教えて下さいな。約束を守るだけでヘッドハンティングが出来ますか?もちろん法務博士なんて名誉でもなんでもない。どの弁護士も肩書きに入れていないと思いますよ。誰も格好悪くて使えない博士号でしょ。

 

 都合の悪いところを無視して、自分の主張だけ言いつのるのなら、中学生だって出来る。伊藤委員にも、もっと大人の議論を期待したい。

 

  


「それから三つ目は,弁護士会はいろいろおっしゃいまして,その弁護士会の皆さんのお気持ちも分からないわけではないのですけれども,私が感じたのは,今回の調査でも回答率が13.4%と言っていますね。つまり,自分たちは余り関心がないのではないか。とにかく,弁護士会全体の問題として,弁護士全体の問題として,そんなことはあまり考えていないのではないかと感じざるを得ないなと。」

 

 この点に関しては、正しい指摘かもしれません。これは、おそらく、弁護士会がこれまで一般会員の意見を無視して派閥の力学で、これまでの日弁連の意向を決定してきた経緯が大きく影響しているようにも思えます。

 

 しかし、よくよく考えてみて欲しいのです。

 

 今、弁護士として活動している人間にとっては、極論すれば給費制は自分の問題とは全く関係ないのです。あくまでこれから法曹を目指そうとする方について、給費制を論じているのですから。

 伊藤委員に即していえば、伊藤委員が法科大学院を退官されたあと、その法科大学院教員の待遇がどうなろうと伊藤委員は普通関知しないでしょう。

 そこを敢えて、弁護士が忙しい中、13.4%も回答を寄せたということは、どのような意味があるのか、今一度考えてみて欲しいのです。

 

 

 まさかその意味も分からずに、伊藤委員が有識者を名乗ることはされないだろうと思うから。

 

 

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません