大パブ閉鎖に関する雑感~その1


 昨日の常議員会で、今年5月末をもって閉鎖になった弁護士法人大阪パブリック法律事務所(以下「大パブ」)の清算に向けての進行状況が報告された。
 そもそもは日弁連の肝いりで、「法の支配をあまねく浸透させる」という意図のもと、全国に先駆けて大阪で、大阪弁護士会が開設した公設事務所であり、閉鎖が決まった際には朝日新聞等でも報道されたのでご記憶のある方も多いだろう。


 これまでマスコミは、弁護士に対して、弁護士制度は社会的インフラと言いながら、弁護士に対して競争しろなどと矛盾した適当なことを言い続けてきた。マスコミの念頭にあるのは、おそらくマスコミが付き合う範囲の、若しくはマスコミが勝手に想像している、高収入の弁護士なのだろう。
 確かに高収入で暇な弁護士(そんな弁護士がいるとすればだが)に対してなら、マスコミの主張も一理あるかもしれない。

 しかし、弁護士も個人事業者である。自らの稼ぎで自分・従業員の生活を維持し、家族を養う必要がある。となれば、採算が取れないボランティア的な仕事よりも、採算が取れる仕事が優先されがちになることを誰も責めることはできないはずなのだ。特に競争原理を弁護士にも求めるのであれば、同時にボランティア的な仕事の処理を弁護士に求めるのは一貫しない主張のように思われる。

 それでも、弁護士費用を負担できない人でありながら、人権擁護のために弁護士が介入する必要があると思われる事件はどうしても発生する。
 このような場合、本来、国がきちんと費用を出すべきなのだが、医療と異なりその点は放置されている状況に近いと私は思う。法テラス制度もあるにはあるが、サービス提供者である弁護士の報酬基準は極めて低く、おそらく仕事の手を抜かない限り、法テラス案件だけでは利益は上げられず、事務所は維持できない。要するに弁護士の善意(ボランティア精神)に頼った制度設計になっている。


 話を戻すが、確かにマスコミ報道では大パブの果たしてきた意義については、概ね紹介されているし、私もその意義を否定するものではない。


 しかし、マスコミ報道は公設事務所は通常赤字であり、その赤字部分を大阪弁護士会で負担してきたことについては、何一つ触れられていないようだ。
 
 私が昨日執行部に聴いたところ、大パブのために大阪弁護士会が自腹を切った額は、15年間での概算だが、5億8800万円にのぼるという。


 このお金はどこかから降ってきたお金ではない。大阪弁護士会の会員が例え自分の事務所が赤字でも歯を食いしばって支払ってきた会費から捻出されているお金なのだ(弁護士会費の滞納は懲戒事由になり、最悪の場合は退会命令を受けるため、弁護士資格を維持するためには、弁護士会費は何よりも優先して負担しなければならない費用なのである)。

 残念ながら、この点に関して、マスコミ報道を見た限り自腹を切って人権擁護のための公設事務所を維持してきた弁護士会・弁護士会員を評価する内容は見られなかったようである。

(続く)