駐車場にいた犬

 先日、映画のレイトショーを見た後の深夜、月極で借りているお寺の境内の駐車場に車を入れようとしたところ、いつもと違う影が車の前を通り過ぎた。

 大体、野良猫数匹が、決まった車の下を寝床にしている(幸い私の車は寝床ではないようだ)ので、猫ならすぐに分かるのだが、どうやら違う動物のようだ。

 一瞬タヌキかなと思い、自分の駐車スペースに車を駐め、降りようとしたところ、その影が近づいてきた。

 犬だ。

 その犬は、5mほど近くまで寄ってきたかと思うと、すぐに方向を変え、木の陰に戻っていく。

 私は、駐車場から出ようとしたが気になって戻ってみると、やはりこちらに近づいてきては、5m程のところで身を翻し木の陰の方に逃げていく。

 私は以前にもコンビニの駐車場で似たようなシチュエーションに出会ったことがあるのでぴんと来た。

 その犬は、ご主人とはぐれたのだ。

 そして駐車場でご主人を待ち続けているのだ。

 車や人が近くに来るとご主人が迎えに来てくれたのかと思って近づいて確認しては、がっかりすることを繰り返していたのだろう。

 首輪はしているようだったので、首輪に連絡先があるかもと思い、身をかがめて近づいてみたがどうにも警戒しているようで、どんどん逃げていく。疲れ果てているだろうに、ご主人がきっと来てくれると信じて、他人に容易に心を許さないのだろう。

 このままお寺の境内から出てしまえば、外は道路だ。道路では眠ることも出来ないだろう。

 私は、犬のことを心配しつつも、下手に手出しをして犬により大きな負担をかけるわけにはいかず、後ろ髪を引かれる思いで駐車場を出たのである。それ以来、車を使っておらず駐車場に足を運ぶ機会がないので、あの子がどうなったかは分からない。

 

 あの子は、ご主人に会えたのだろうか。

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廃墟の中から見上げるひんやりとした空(ゴットランド島)