突然、相続人だと言われたら・・・・
近時、「突然相続」といわれる現象が言われています。
つまり、ずいぶん前から音信不通で、会ったこともない伯父さんや伯母さんがいたとしましょう。その方々が亡くなったということで、あなたが相続人だ、と弁護士などから連絡が来て驚かされるような事態です。
法定相続人には法律で順位が決まっており、配偶者、子供、両親(直系血族)、兄弟(兄弟姉妹)となります。
私に妻子がいれば妻子が法定相続人になりますし、妻だけで子供がいなければ妻と両親(直系血族)が法定相続人になります。妻だけで子供がおらず、さらに両親も死んでいる場合は、妻と私の兄弟姉妹も法定相続人になります。私が死亡する前に兄弟姉妹が死亡していれば、その死亡した兄弟姉妹の子供まで、私の財産を相続できます。
平たく言えば、誰かが死亡した際の法定相続人は、その人の甥・姪まで及ぶということになります。
ですから、先ほど述べたように、まったく顔も見たことがない伯父さんの相続人にあなたがなってしまう場合もありうるのです。
相続だから、財産もらえてラッキーと思われる方もいるかもしれません。しかし、現実はそう甘いものではありません。
ご存じの通り、相続は原則としてプラス財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も同時に受け継ぐことになります。しかも、伯父さんにプラス財産が多い場合は、甥姪まで相続が回ってくる前に、順位が優先する相続人がさっさと遺産をもらってしまうことがほとんどです。
これに対して、マイナス財産が多い場合は、相続人には相続放棄という手段がありますから、順位の優先する相続人は先に相続放棄をしてしまっている場合も多いのです。相続放棄をするとその人は相続人ではなかったという扱いになりますから、結局残された法定相続人は、甥・姪だったということも実はよくある話なのです。
甥・姪が相続放棄できれば問題は大きくないのですが、相続放棄ができる期間は原則、自己のために相続の開始があったことを知ってから3か月です(民法915条1項)。この期間を経過してしまっている場合もゼロではありません。
そうだとすると、突然相続により甥・姪が相続放棄できずに借金だけ負わされるという不都合な結果が生じかねません。
このような場合、判例は「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは、相続人が相続開始の原因たる事実の発生(例えば伯父さんの死亡)を知り、かつ、そのために自己が相続人となったことを覚知したときを指す。と判断しています(大決T15.8.3)。
このような主張が家庭裁判所で認められれば、相続放棄ができる場合もあります。
3か月などあっという間なので、もし、突然、相続人だと言われたら、まず弁護士さんに相談してみることが大事なのです。
大阪弁護士会所属 弁護士 坂野 真一
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