契約更新は当然ではない 〜フランチャイズ契約をめぐるトラブルから学ぶこと〜東京地判令和5年11月20日金融・商事判例1703号26頁

ビジネスで一度契約を結んだ関係が続いていると、「次もきっと当然、契約は更新されるだろう」と感じることが少なくありません。しかし、契約更新は“当然の権利”ではなく、“新たな合意”に基づく行為であるということを、最新の裁判例が改めて示しています(東京地判令和5年11月20日金融・商事判例1703号26頁)。
この事案は、日本のアパレル企業(フランチャイジー、原告)と、東南アジアで複数のブランドを展開するシンガポール法人(フランチャイザー、被告)との間のフランチャイズ契約を巡る紛争です。もともと両者は自動更新条項付きの契約を結んでいましたが、その後、新たに「更新にはフランチャイザー(シンガポール法人)の同意が必要」と明記された契約を締結していました。
契約の満了が近づく中、日本企業側は新店舗の移転準備なども進めながら、契約更新を希望します。しかし、フランチャイザーは最終的に更新に応じず、他の企業と新たに契約を締結。日本企業側は、「黙示の合意があった」「信義則違反だ」などとして損害賠償を求めました。
裁判所は、以下の理由から日本企業側の請求をすべて退けました。
・契約条項に沿って「更新には同意が必要」と明記されており、黙示の同意も認められない
契約書で「更新にはフランチャイザー(被告)の同意が絶対条件」と明記され、通知も書面によることが必要と定められていました。被告が異議や拒絶を明確に述べていなかったことや、両社が新規店舗や発注協議等を行っていたことだけでは、「黙示の同意」とはならないと判断されました。
・更新拒絶に「特別な理由(やむを得ない事情)」が必要とはいえない
契約には更新拒絶に「特別な事情」や「やむを得ない事由」がなければならないという定めもなく、当事者双方が平等な立場で契約締結した企業間取引であることから、契約書に明文のない制約は認められないとされました。
・信義則違反や権利濫用の主張も否定
長年にわたる継続取引や、原告の積極的な投資・発注・準備などがあったとしても、契約条項どおりの更新拒絶は不当とは言えず、法的保護に値する合理的期待とは認められませんでした。原告が抱いた更新への期待や発注に伴う計画変更・損害も、「契約が更新されなかった場合も想定すべきであった」と判示されました。
・交渉過程にも不法行為は認められない
「更新する」との合理的期待を巧妙にあおり、不当に交渉を長引かせた等の事情がない限り、不法行為は成立しないとも明確に判断されています。
この事案から学べることは、たとえこれまでの関係が良好であっても、契約更新の有無は契約条項と明確な合意に基づいて判断されるという点です。「空気を読んでくれるだろう」「当然、更新してくれるはず」といった期待ベースの判断は通用しません。
⚠️契約更新に関する注意点
・契約書に自動更新や更新条件について明記しておきましょう
・契約更新を希望する場合、書面やメールで明確に意思を確認することが重要です
・相手の同意が得られていない段階での投資や準備は、損失リスクにつながります
契約更新や取引継続に関する誤解は、ビジネス上の損害や信頼関係の崩壊につながりかねません。だからこそ、契約の設計や更新交渉には法的視点のサポートが不可欠です。
少しでも不安を感じたときは、早めに弁護士にご相談ください。「こんなときどうすれば?」に備えることが、トラブル回避につながります。
弁護士 永井誠一郎
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