【下請法から取適法③】価格交渉は「権利」から「義務」へ~労務費・原材料費の適切な転嫁と「買いたたき」のリスク
今回は、現在の物価高騰情勢を踏まえ、公正取引委員会が厳しく監視している「価格転嫁・価格交渉」をテーマにしています。公正取引委員会は、取適法の目的として「価格転嫁及び取引の適正化」を明示しており、発注側の実務対応が強く求められます。
1.協議をしないまま一方的に決めること自体が「違反リスク」
2026年(令和8年)1月1日施行の「取適法」体制下で委託事業者(発注側)に求められるのは、単に不当な値下げをしないことにとどまりません。
取適法では、「協議を適切に行わない一方的な代金決定」が問題となることが明確に示されています。
中小受託事業者から、労務費・原材料費・エネルギーコスト等の上昇を理由として価格交渉の申入れがあったにもかかわらず、
・協議の場を設けない
・明示的な協議をせず従来価格に据え置く
・価格転嫁しない理由を説明しない
といった対応を取ると、「買いたたき」等の禁止行為に該当するおそれが高まります。
物価高騰の影響を中小企業側に一方的に押し付ける取引慣行に対しては、これまで以上に行政の厳しい目が注がれている点に注意が必要です。
2.買いたたきの考え方と「価格交渉」重視の明確化
公正取引委員会は、労務費・原材料費・エネルギーコスト等の上昇局面において、価格交渉を経ない据え置き等が「買いたたき」に該当し得ることを、運用基準の明確化を通じて示してきました。
さらに、労務費の適切な転嫁のための「価格交渉に関する指針」も公表され、実務での行動指針が整備されています。
以下の行為は、特に「買いたたき」等として問題視されるリスクが高い類型です(いずれも個別事情により評価されます)。
① 価格交渉の拒否・据え置き
受託者から協議の申入れがあるにもかかわらず、
「今は予算がない」「一律カットの時期だ」などとして協議の場を設けないこと。
コスト上昇が明らかであるのに、価格交渉の場で明示的に協議しないまま従来価格に据え置くこと、または据え置き理由を説明しないこと。
② 労務費転嫁への不十分な対応
最低賃金の上昇や人件費上昇局面で、受託者が見積り等の根拠を示しているのに、合理的理由なく、発注側の事情だけで不利益な条件を押し付けると、問題視されやすくなります。
労務費の転嫁については、価格交渉を促す指針が公表されており、発注側も「交渉の進め方・説明の仕方」を整備する必要があります。
③ 根拠のない「一律値引き」
受託者ごとのコスト状況を踏まえず、
「一律5%のコストダウン」などと画一的な値引きを要請する行為は、交渉プロセス不備と併せて「買いたたき」評価のリスクを高めます。
3.実務対応
万一の調査・立入検査に備えるうえで重要なのは、結論(価格)そのもの以上に、「適切なプロセスを経て価格を決めた」ことを説明できる状態を作ることです。
定期的な「協議の場」の設営
受託者からの申入れ待ちにせず、年1〜2回など、定期的に価格見直し協議を行う枠組みをマニュアル化してください。
価格転嫁・交渉を重視する行政の方向性に照らし、協議機会を制度として確保することが有効です。
交渉プロセスの記録(議事録・メールの保存)
「誰が」「いつ」「何を根拠に」価格を決めたか。
交渉過程を、メール・議事録・稟議メモ等で残すことが必須です。
ポイント:受託者の見積りに対して、検討した事実と理由(採用/一部採用/不採用の根拠)を記録に残すことが、当局対応の最大の防御になります。
価格改定のルール化(スライド条項の活用)
「原材料価格が一定割合変動した場合は協議する」など、スライド条項(協議条項)を基本契約に盛り込むことは、透明性・予見可能性を高め、結果として紛争予防にもつながります。
弁護士 永井誠一郎
1.協議をしないまま一方的に決めること自体が「違反リスク」
2026年(令和8年)1月1日施行の「取適法」体制下で委託事業者(発注側)に求められるのは、単に不当な値下げをしないことにとどまりません。
取適法では、「協議を適切に行わない一方的な代金決定」が問題となることが明確に示されています。
中小受託事業者から、労務費・原材料費・エネルギーコスト等の上昇を理由として価格交渉の申入れがあったにもかかわらず、
・協議の場を設けない
・明示的な協議をせず従来価格に据え置く
・価格転嫁しない理由を説明しない
といった対応を取ると、「買いたたき」等の禁止行為に該当するおそれが高まります。
物価高騰の影響を中小企業側に一方的に押し付ける取引慣行に対しては、これまで以上に行政の厳しい目が注がれている点に注意が必要です。
2.買いたたきの考え方と「価格交渉」重視の明確化
公正取引委員会は、労務費・原材料費・エネルギーコスト等の上昇局面において、価格交渉を経ない据え置き等が「買いたたき」に該当し得ることを、運用基準の明確化を通じて示してきました。
さらに、労務費の適切な転嫁のための「価格交渉に関する指針」も公表され、実務での行動指針が整備されています。
以下の行為は、特に「買いたたき」等として問題視されるリスクが高い類型です(いずれも個別事情により評価されます)。
① 価格交渉の拒否・据え置き
受託者から協議の申入れがあるにもかかわらず、
「今は予算がない」「一律カットの時期だ」などとして協議の場を設けないこと。
コスト上昇が明らかであるのに、価格交渉の場で明示的に協議しないまま従来価格に据え置くこと、または据え置き理由を説明しないこと。
② 労務費転嫁への不十分な対応
最低賃金の上昇や人件費上昇局面で、受託者が見積り等の根拠を示しているのに、合理的理由なく、発注側の事情だけで不利益な条件を押し付けると、問題視されやすくなります。
労務費の転嫁については、価格交渉を促す指針が公表されており、発注側も「交渉の進め方・説明の仕方」を整備する必要があります。
③ 根拠のない「一律値引き」
受託者ごとのコスト状況を踏まえず、
「一律5%のコストダウン」などと画一的な値引きを要請する行為は、交渉プロセス不備と併せて「買いたたき」評価のリスクを高めます。
3.実務対応
万一の調査・立入検査に備えるうえで重要なのは、結論(価格)そのもの以上に、「適切なプロセスを経て価格を決めた」ことを説明できる状態を作ることです。
定期的な「協議の場」の設営
受託者からの申入れ待ちにせず、年1〜2回など、定期的に価格見直し協議を行う枠組みをマニュアル化してください。
価格転嫁・交渉を重視する行政の方向性に照らし、協議機会を制度として確保することが有効です。
交渉プロセスの記録(議事録・メールの保存)
「誰が」「いつ」「何を根拠に」価格を決めたか。
交渉過程を、メール・議事録・稟議メモ等で残すことが必須です。
ポイント:受託者の見積りに対して、検討した事実と理由(採用/一部採用/不採用の根拠)を記録に残すことが、当局対応の最大の防御になります。
価格改定のルール化(スライド条項の活用)
「原材料価格が一定割合変動した場合は協議する」など、スライド条項(協議条項)を基本契約に盛り込むことは、透明性・予見可能性を高め、結果として紛争予防にもつながります。
弁護士 永井誠一郎
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