【下請法から取適法⑤】行政の監視はより厳格に。今すぐ確認すべき「取適法」対応チェックリスト
1. コンプライアンスの欠如は「社名掲載(公表)」リスクに直結する
2026年1月1日施行の取適法(中小受託取引適正化法)体制下で、委託事業者(発注側)が最も恐れるべきは、単なる行政指導に留まりません。公正取引委員会は、委託事業者の遵守事項(第5条)違反があると認めるとき、必要な措置をとるべきことを勧告できます。
そして勧告は、公取委のウェブサイト上で一覧として公表される運用があり、結果として企業名が掲載されます。
いったん行政サイト等で社名が明示されれば、取引先からの信用低下、採用活動への悪影響、ESGを重視する金融機関・投資家からの評価低下など、実害は広範に及び得ます。したがって「契約書だけ整えれば安心」ではなく、実務運用まで含めた点検が不可欠です。
2. 強化された執行体制と公表制度
改正法の運用方針に基づき、特に注意すべき行政の動きを整理します。
(1)違反が認定されれば「勧告」(第10条)
公正取引委員会は、第5条違反があると認めるとき、委託事業者に対して、受領、代金支払、減額分の支払、遅延利息の支払等を含む必要措置を勧告できます。
これまでは「悪質なケース」に限定されていた印象のある勧告・公表ですが、新法下では、価格転嫁の拒否や手形払の継続など、構造的な問題に対しても積極的に適用される方針が示されています。
(2)調査・立入検査の権限(第12条)
公正取引委員会および中小企業庁長官には、報告徴収や立入検査(帳簿書類等の検査)の権限が規定されています。
行政による書面調査は、デジタル化によってより効率的かつ詳細になっています。中小受託事業者(受注側)からの匿名通報制度も拡充されており、「隠し通せる」という考えはもはや通用しません。
(3)特に注目される対象
「物流2024年問題」に関連する運送取引や、労務費負担が大きい製造現場、ソフトウェア開発などは、重点的な監視対象となっています。
3. 実務総点検チェックリスト(第1回〜第4回の総まとめ)
以下は、社内でそのまま点検に使える形に落とし込んだチェックリストです。
1) 対象範囲(適用判定)
資本金基準だけでなく、従業員数基準(例:300人/100人)も踏まえて、自社が「委託事業者」に該当するか再判定したか。
2) 発注内容等の明示(いわゆる「3条書面」相当の実務)
発注時に、給付内容・代金額・支払期日・支払方法等を、書面または電磁的方法で明示できているか。
旧用語(下請代金等)が残っている場合、社内書式の更新方針を定めたか。
3) 支払サイト(60日以内)
受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間で支払期日を設定できているか。
4) 支払手段(現金化を阻害しない運用)
支払手段が、支払期日までに金銭化が困難なものになっていないか(例:手形等を含む)。
振込手数料の差引きがある場合、契約・運用の整合(合意・実費・説明)するか。
5) 価格交渉(プロセスの証跡)
労務費・原材料費等の上昇局面で、価格交渉に関する誠実な協議のプロセス(実施・検討・回答)を記録として残せているか。
6) 現場の指示(返品・やり直し・協力金等)
無償のやり直し、返品、協力金名目の金銭要請などが起きないよう、現場向けに禁止事項を具体例で周知したか。
仕様変更・追加作業は「見積再提示+追加発注(変更合意)」のフローに統一したか。
4. 最後に:弁護士による早期リーガルチェックの重要性
本法の違反は、故意だけでなく「知らなかった」「従来の慣習だった」という過失によっても発生します。また、一度行政の調査が始まると、過去数年分の取引に遡って是正を求められ、多額の遅延利息や返還金が発生することもあります。
「うちは大丈夫だろう」と過信せず、現在の取引基本契約書や発注フローが新法に適合しているか、一度専門家による客観的なリーガルチェックを受けることを強くお勧めします。
弁護士 永井誠一郎
2026年1月1日施行の取適法(中小受託取引適正化法)体制下で、委託事業者(発注側)が最も恐れるべきは、単なる行政指導に留まりません。公正取引委員会は、委託事業者の遵守事項(第5条)違反があると認めるとき、必要な措置をとるべきことを勧告できます。
そして勧告は、公取委のウェブサイト上で一覧として公表される運用があり、結果として企業名が掲載されます。
いったん行政サイト等で社名が明示されれば、取引先からの信用低下、採用活動への悪影響、ESGを重視する金融機関・投資家からの評価低下など、実害は広範に及び得ます。したがって「契約書だけ整えれば安心」ではなく、実務運用まで含めた点検が不可欠です。
2. 強化された執行体制と公表制度
改正法の運用方針に基づき、特に注意すべき行政の動きを整理します。
(1)違反が認定されれば「勧告」(第10条)
公正取引委員会は、第5条違反があると認めるとき、委託事業者に対して、受領、代金支払、減額分の支払、遅延利息の支払等を含む必要措置を勧告できます。
これまでは「悪質なケース」に限定されていた印象のある勧告・公表ですが、新法下では、価格転嫁の拒否や手形払の継続など、構造的な問題に対しても積極的に適用される方針が示されています。
(2)調査・立入検査の権限(第12条)
公正取引委員会および中小企業庁長官には、報告徴収や立入検査(帳簿書類等の検査)の権限が規定されています。
行政による書面調査は、デジタル化によってより効率的かつ詳細になっています。中小受託事業者(受注側)からの匿名通報制度も拡充されており、「隠し通せる」という考えはもはや通用しません。
(3)特に注目される対象
「物流2024年問題」に関連する運送取引や、労務費負担が大きい製造現場、ソフトウェア開発などは、重点的な監視対象となっています。
3. 実務総点検チェックリスト(第1回〜第4回の総まとめ)
以下は、社内でそのまま点検に使える形に落とし込んだチェックリストです。
1) 対象範囲(適用判定)
資本金基準だけでなく、従業員数基準(例:300人/100人)も踏まえて、自社が「委託事業者」に該当するか再判定したか。
2) 発注内容等の明示(いわゆる「3条書面」相当の実務)
発注時に、給付内容・代金額・支払期日・支払方法等を、書面または電磁的方法で明示できているか。
旧用語(下請代金等)が残っている場合、社内書式の更新方針を定めたか。
3) 支払サイト(60日以内)
受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間で支払期日を設定できているか。
4) 支払手段(現金化を阻害しない運用)
支払手段が、支払期日までに金銭化が困難なものになっていないか(例:手形等を含む)。
振込手数料の差引きがある場合、契約・運用の整合(合意・実費・説明)するか。
5) 価格交渉(プロセスの証跡)
労務費・原材料費等の上昇局面で、価格交渉に関する誠実な協議のプロセス(実施・検討・回答)を記録として残せているか。
6) 現場の指示(返品・やり直し・協力金等)
無償のやり直し、返品、協力金名目の金銭要請などが起きないよう、現場向けに禁止事項を具体例で周知したか。
仕様変更・追加作業は「見積再提示+追加発注(変更合意)」のフローに統一したか。
4. 最後に:弁護士による早期リーガルチェックの重要性
本法の違反は、故意だけでなく「知らなかった」「従来の慣習だった」という過失によっても発生します。また、一度行政の調査が始まると、過去数年分の取引に遡って是正を求められ、多額の遅延利息や返還金が発生することもあります。
「うちは大丈夫だろう」と過信せず、現在の取引基本契約書や発注フローが新法に適合しているか、一度専門家による客観的なリーガルチェックを受けることを強くお勧めします。
弁護士 永井誠一郎
SHARE
シェアする
[addtoany] シェアする