おひとりさま・高齢期の安心を守る「任意後見・見守り・死後事務」の設計と令和8年民法等改正のポイント
元気なうちから将来に備えたい方や、身寄りがなく将来の生活・財産管理に不安を抱える高齢者の方にとって、どのような法的支援を準備しておくかは極めて重要な課題です。介護や福祉の現場においても、本人の判断能力の低下に伴う契約手続きの滞りや、亡くなられた後の対応(死後事務)に関する相談が年々増加しています。
令和8年6月に公布された「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」では、本人の自己決定を尊重し、制度をより柔軟に利用できるよう、成年後見制度および任意後見制度に関する大幅な見直しが行われました。
本記事では、将来の不安を切れ目なく解消するために不可欠となる「見守り契約・任意後見契約・死後事務委任契約」の3つの仕組みと、今回の法改正によって任意後見がどのように使いやすくなったのかを分かりやすく解説します。
■ 生前から死後までを切れ目なく支える「3つの契約」
高齢期の法的な備えは、一つの制度だけで完結するものではありません。「判断能力が十分にある時期」「認知症等により判断能力が衰えた時期」「お亡くなりになった後」の3つの段階に応じた契約をセットで設計しておくことが実務上不可欠です。
1.見守り契約(判断能力が十分にある時期)
定期的な面談や電話連絡を通じて、健康状態や生活状況を継続的に把握する契約です。生活の変化や判断能力の低下を早期に察知し、必要なタイミングで後見手続へ移行するための架け橋となります。
2.任意後見契約(判断能力が低下した後の時期)
本人が元気なうちに、将来認知症等で判断能力が不十分になった場合に備え、財産管理や施設入所等の身上保護に関する代理権を信頼できる支援者に委任しておく契約です。2.家庭裁判所での手続きを経て効力が発生します。
3.死後事務委任契約(お亡くなりになった後の時期)
委任契約や任意後見契約は、本人の死亡によって当然に終了します。そのため、葬儀や火葬・納骨の手配、医療費や施設利用料の未払金精算、賃貸住宅の退去・家財整理など、死後に発生する煩雑な事務手続きをあらかじめ託しておくための契約です。
これら3つをあわせて公正証書で締結しておくことで、生前から死後まで途切れることのない確実な生活・権利の保護が可能となります。
■ 令和8年法改正で任意後見制度はどう変わったか
従来の任意後見制度は、本人の意思を尊重できる優れた制度である一方、「必ず監督人が選任されて費用負担が生じる」「受任者が先に亡くなった場合の備えが難しい」といった使い勝手の課題がありました。今回の法改正では、これらの懸念を解消する見直しが盛り込まれています。
・裁判所による直接監督(監督人必置の見直し) 家庭裁判所が明らかに任意後見監督人による監督の必要がないと認めるときは、監督人を選任せず、裁判所が直接任意後見人を監督できるようになりました(任意後見契約法7条)。事案により監督人報酬の発生を抑え、柔軟な発効が可能となります。
・予備的受任者の指定(順序付けの合意) あらかじめ契約内で「効力を発生させる順序」を定める合意が可能となりました(同法4条、5条)。第1順位の受任者が死亡や健康悪化で受任できなくなった場合でも、第2順位の受任者がスムーズに後見事務を引き継ぐことができます。
・公正証書で指定した第三者による発効申立て 本人が事前に公正証書で指定しておけば、親族や受任者以外の第三者(生活状況を把握している支援者等)であっても、任意後見を発効させる裁判手続を申し立てることができるようになりました(同法5条、6条)。
・法定後見(新・補助制度)との併用 法定後見が「補助の制度」に一元化されたことに伴い、補助の審判が開始された場合でも任意後見契約を終了させず、存続させることが可能となりました(同法5条等)。
当事務所では、ご本人の意思を尊重したオーダーメイドの任意後見契約、見守り契約、死後事務委任契約、ならびに公正証書遺言の作成支援を行っております。
ケアマネジャー様や地域包括支援センター等の福祉関係機関とも密に連携し、医療・介護の現場で生じる契約問題や将来の権利擁護を、法的手続の観点から円滑にバックアップいたします。
ご自身の将来設計に不安をお持ちのご本人様・ご家族様はもちろん、担当ケースにおいて身寄りのないご利用者様の権利擁護にお悩みの福祉関係者の皆様からのご相談も随時受け付けております。
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